ジャイナ教を学ぶ 第二部
3章 / 全8

世界には、動くための場所と止まるための場所がある

魂、物質、運動と静止の媒体、空間、時間という六つの実体から、ジャイナ教独自の宇宙像を読み解きます。

nakano
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ジャイナ教
ドラヴィヤ
宇宙論

魚が泳ぐには水が要ります。鳥が休むには枝が要ります。

では、宇宙にあるあらゆる運動と静止は、何によって可能になるのでしょうか。

ジャイナ教は、動く物と止まる物だけで世界を説明しません。運動を可能にする媒体と、静止を可能にする媒体まで、実在するものとして数えます。

六つのドラヴィヤ

『タットヴァールタ・スートラ』第5章は、世界をドラヴィヤ、すなわち変化しながら存続する実体から捉えます。伝統的な整理では、宇宙は次の六つから成ります。

実体意味何を説明するか
ジーヴァ魂・生命主体知り、見る主体
プドガラ物質身体、音、光、カルマ物質など
ダルマ・ドラヴィヤ運動の媒体ジーヴァと物質が動ける条件
アダルマ・ドラヴィヤ静止の媒体ジーヴァと物質が止まれる条件
アーカーシャ空間他の実体が存在する場所
カーラ時間変化、前後、持続を捉える条件

ダルマとアダルマは、善と悪ではありません。ここでのダルマは物を押して動かす力ではなく、運動を可能にする媒体です。古い注釈は、水が泳ぐ魚を直接押さないまま遊泳を可能にするようなものとして説明します。アダルマも、物を停止させる力ではなく、止まることを可能にする媒体です。旅人が木陰で休めるときの影にたとえられます。

さらに、最初の五つは空間的な広がりをもつアスティカーヤと呼ばれます。時間も実体に数えられますが、同じ意味での広がりをもつアスティカーヤには含めません。六実体をすべて同じ箱へ入れず、空間的な広がりの有無まで区別しているのです。

六つの実体と、それぞれが説明する条件

魂は、宇宙の網に捕らえられた震えではない

ジーヴァを、六実体のネットワークから一時的に生じる「震え」と考えると、ジャイナ教の魂とは別のものになります。ジーヴァは、それ自体で実在する無数の主体です。

身体を替えながら輪廻しても、ジーヴァは物質へ還元されません。束縛の原因は、六つの実体が共に存在することではなく、魂にカルマ物質が結びついていることです。解脱した魂も個別のジーヴァとして存続します。

ここを押さえると、ジャイナ教が「すべては一つ」と語る思想ではないことが分かります。魂は多数あり、魂と物質は同じものになりません。世界は創造神によって作られたのではなく、複数の実体がそれぞれの性質を保ちながら存在する、始まりのない宇宙として描かれます。

分類することは、何を見るかを決める

クロード・レヴィ=ストロースの構造主義も、人間が世界をどのような区分と関係によって理解しているかを調べました。神話や親族制度の意味は、孤立した要素より、要素同士の差や配置から立ち上がると考えます。

ジャイナ教の六実体論にも、世界を関係の中で捉える面があります。しかし、レヴィ=ストロースは文化を理解する分析方法を組み立て、ジャイナ教は宇宙に何が実在するかを語ります。分類の対象も、目的も異なります。

共通する問いは、「最初にどんな箱を用意するかによって、見える世界は変わるのではないか」です。

現代人は、動く物を見れば物体と力を探します。ジャイナ教は、その前に「運動が可能であるための実在」を一つの箱として置きました。この分類を現代物理学の先取りとして評価する必要はありません。むしろ、私たちが当然だと思っている分類も、世界を見る一つの方法にすぎないと気づかせるところに面白さがあります。

参考文献

  • ウマースヴァーティ『タットヴァールタ・スートラ』第5章
  • Nathmal Tatia, That Which Is: Tattvārtha Sūtra
  • Padmanabh S. Jaini, The Jaina Path of Purification
  • Claude Lévi-Strauss, Structural Anthropology