自性(じしょう)

nakano
5 min read

概要

自性(じしょう、サンスクリット: svabhāva)とは、他の条件に依存せず、それ自体の側から成立する固有のあり方です。「そのものらしさ」という日常語より強く、条件づけられず、別のものによって作られないという含みがあります。

中観思想は、現実の事物にそのような自性を見いだせないことをと呼びます。

自性を立てると、なぜ因果が止まるのか

『中論』第1章第3偈は、原因となる条件の中に自性は見いだせないと述べます。

結果に自性があり、原因の中ですでに完成しているなら、新たに生じる必要はありません。反対に、原因と結果が完全に無関係なら、特定の原因から特定の結果が生じる理由が失われます。

また、苦に自性があれば、条件を変えても苦は止みません。自性は空の反対語というだけでなく、因果・変化・修行が成立するかを検討するための重要な概念です。

名前と自性を区別する

「人」「火」「約束」という名前を使えるからといって、その名前に対応する独立不変の実体があるとは限りません。日常の言葉と因果は働きますが、働くことから自性を推論する必要はありません。

自性の否定は、ものの存在や責任をすべて否定することではありません。条件に依存して成立するものを、条件から切り離して固定しないための検討です。

この概念が登場するブログ記事

さらに深く知るためのガイド

  • ナーガールジュナ『根本中頌(中論)』第1章、第24章
  • 桂紹隆・五島清隆『龍樹『根本中頌』を読む』

Linked References