プラサンガ / 帰謬論証 (Prasaṅga)
nakano
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概要
プラサンガ(Prasaṅga)は、一般に「帰謬論証(きびゅうろんしょう)」と訳されます。対論者の前提をいったん受け取り、その前提から、対論者自身が認めにくい帰結が生じることを示す論証です。
『中論』には、自性のある原因、運動、自己などを前提にすると、因果や変化を説明しにくくなることを示す議論が数多くあります。ただし、ナーガールジュナ本人が後代の「プラサンギカ」という学派名を名乗ったわけではありません。
論証の基本形
- 対論者が立てた前提を確認します。
- その前提を一貫して適用し、帰結を追います。
- 因果、変化、経験、対論者自身の立場と両立しにくい結果を示します。
- 反対側に新しい自性を置かず、最初の前提を見直します。
帰謬論証は、単に矛盾を見つける言葉遊びではありません。自性を立てた説明が、日常的に認めている因果や変化をかえって成立しにくくすることを示します。
後代の中観派での論争
6世紀頃のバーヴィヴェーカは、対論者と共有できる前提に基づき、独立した推論を用いて中観を論証しようとしました。7世紀頃のチャンドラキールティは、独立した論証が自性のある対象や命題を認めることにならないかを問い、相手の前提から帰結を示す方法を重視しました。
この違いは、後代、とくにチベット仏教の学説史で「スヴァータントリカ」と「プラサンギカ」という名称によって整理されます。二つの名称をナーガールジュナの時代へそのまま戻さない注意が必要です。
また、チャンドラキールティの立場を「日常的な主張を一切しない」「中観の目的は沈黙である」とまとめるのも正確ではありません。争点は、勝義を論証するときに独立した定立をどう扱うかです。
この概念が登場するブログ記事
さらに深く知るためのガイド
- 桂紹隆『インド人の論理学』
- 立川武蔵『中観の思想』