アヒンサー(ジャイナ教)

nakano
5 min read

概要

アヒンサー(ahiṃsā)は、一般に非暴力・不殺生・不害と訳されます。ジャイナ教では五つの誓戒の第一に置かれ、出家者は大誓戒として、在家者は生活上の限定を伴う誓戒として実践します。

『タットヴァールタ・スートラ』第7章13節は、ヒンサーを、不注意な活動によって生命の力を損なうこととして説明します。加害の結果だけでなく、身体・言葉・心の行為、怒りや貪りなどの情念、不注意が問題になります。

実践の範囲

ジャイナ教の生命観は、人間や動物に限られません。植物や、土・水・火・風を身体とする一感覚の生命も考えられます。そのためアヒンサーは、歩行、発話、食事、物の扱い、所有など日常の細部へ広がります。

口覆いや地面を払う道具の使い方には、宗派や出家者の集団による違いがあります。すべてのジャイナ教徒が同じ形で実践するわけではありません。

現代思想との比較

レヴィナスの「顔の倫理」や現代環境倫理は、他者や人間以外の生命への応答を考える補助線になります。しかし、アヒンサーを「顔への無限責任」や「自然の固有価値」と定義することはできません。

ジャイナ教では、多数のジーヴァ、カルマ物質、輪廻、解脱が倫理の基礎にあります。現代への応用では、原典の誓戒と記事側の翻訳を分けて扱います。

関連するブログ記事