別愛

nakano
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概要

別愛(べつあい、Bie Ai)とは、古代中国の墨子が批判した概念で、「自分や自分の身内(家族・国家)だけを特別に愛し、それ以外の者を差別して軽んじる愛」のことです。墨子は、世の中のすべての争い、搾取、戦争の根本原因は、悪意ではなく、この「差別する愛」にあると断じました。

詳細解説

当時主流だった儒教は、親に対する「孝」や兄弟に対する「悌」といった身内への自然な愛情を道徳の出発点とし、それを社会全体へと徐々に広げていくことを理想としました。しかし墨子は、この構造そのものに致命的な欠陥(バグ)があると指摘します。

「身内への愛」は、限られたリソースの中では必然的に「身内以外への無関心」や「外部からの略奪の正当化」に転化します。たとえば、自分の家族を養うために他人の畑から盗む、自国の繁栄のために他国を侵略するといった行為は、純粋な悪意からではなく、「身内を愛する」という強い感情から引き起こされます。

現代社会における自国第一主義ナショナリズム、あるいはSNSにおけるエコーチェンバー現象(自分と似た価値観の集団だけを優遇し、外部を敵視する構造)も、まさに墨子が批判した「別愛」の現代的な現れと言えます。墨子はこの別愛を克服し、すべての人をフラットに愛する「兼愛」というシステムへ移行することのみが、人類を破滅から救う道だと考えました。

この概念が登場するブログ記事

さらに深く知るためのガイド

  • Wikipedia「墨家」
  • ポール・スロービック「共感の崩壊」("If I Look at the Mass I Will Never Act", Judgment and Decision Making, 2007年)