兼愛
nakano
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概要
兼愛(けんあい、Jian Ai)は、自分の身・家・国だけを配慮し、他者側を害してよい対象にする関係を改めようとする墨家の中心思想です。「兼愛中」は、他人の国を自国のように、他人の家を自家のように、他人の身体を自分の身体のように見ると述べます。
現代の研究では、universal love のほかに inclusive care と訳されます。後者は、全員へ同じ強さの感情を抱くことよりも、誰も道徳的な配慮から除外しないという意味を捉えやすい表現です。
詳細解説
「兼愛上」は、君臣、父子、兄弟、家と家、国と国が互いを害する原因を「相愛さないこと」に求めます。その反対に、互いを愛し、互いを利するなら、攻撃や争いが収まると論じます。
ここで批判されるのは、家族への愛そのものではありません。自分側の利益だけを数え、他者の生や家を配慮から外したまま害してよいとする判断です。そのため、家族を実際に世話することと、他人を同じ方法で世話することまで同一にする必要はありません。大切なのは、関係の違いを、他者への加害を正当化する境界へ変えないことです。
兼愛は「交相利」と結び付きます。他者を配慮に含めることが、その人の生、家、国を利する行為として現れ、互いを害する秩序を変えることが期待されます。個人の感情だけでなく、統治や戦争まで射程に入る点が特徴です。
兼愛の要点
- 他者の身体、家、国も、害してよい対象にしない。
- 身近な関係を消すことと、他者を配慮から除外しないことを区別する。
- 愛の感情だけでなく、生命、安全、秩序を利する行為と結び付ける。
- 天下の利や天の意志を含む墨家の政治的・宗教的な構想の中で理解する。
この概念が登場するブログ記事
さらに深く知るためのガイド
- 『墨子』「兼愛上」、「兼愛中」
- Stanford Encyclopedia of Philosophy, “Mohism”
- 墨翟(著)、金谷治(訳)『墨子』(岩波文庫)