生命力(Vital Force / テンペルスの力の存在論)

nakano
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概要

生命力(Vital Force)は、ベルギー出身の宣教師Placide Tempelsが『Bantu Philosophy』で提示した中心概念です。テンペルスは、現在のコンゴ民主共和国に暮らすルバの思想を、「存在とは力である」という形で体系化しました。

この著作はアフリカ哲学を世界へ知らせる一つの契機になりましたが、植民地期の宣教師が、特定地域の思想をBantu全体の哲学として語った仕事でもあります。「アフリカ人はみな世界を生命エネルギーとして捉える」と一般化する根拠にはできません。

詳細解説

1. 実体ではなく、増減する力として存在を見る

テンペルスの説明では、存在は静止した物ではなく、強まり、弱まり、他の存在へ影響する力として捉えられます。神、祖先、人、動植物、物のあいだには秩序があり、力の増大が生の目標として語られます。

これは、西洋哲学を静的な実体論、アフリカ哲学を動的な力の哲学とする鮮明な対比を生みました。しかし、その対比自体が二つの側を単純化している可能性があります。

2. 誰の言葉で「力」と呼んだのか

Ratheteは、テンペルスがforceに対応するルバや南部アフリカ諸語の語を十分に示していない、という批判を紹介しています。翻訳語が見つからないことだけで思想が存在しないとは言えませんが、研究者の枠組みを現地の教義として語ることもできません。

3. セリティと同一ではない

北ソトのセリティには、人格、尊厳、個性、影、祖先、儀礼、社会的評価が重なります。テンペルスの力の存在論と比較できる部分はあっても、個人のセリティを生命力の放射と断定したり、ルバの階層を北ソトへそのまま移したりすることはできません。

比較するときは、地域、言語、著者の立場、資料の年代を明示し、共通点より先に違いを確認する必要があります。

さらに深く知るためのガイド

  • Placide Tempels, Bantu Philosophy, Présence Africaine, English translation, 1959.
  • Matome Bethuel Rathete, The Reality and Relevance of Seriti in the Past and Present, University of South Africa, 2007(UNISA Institutional Repository公開: 2009).