生命力(Vital Force / 力の存在論)
nakano
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概要
生命力(Vital Force)とは、ベルギーの宣教師プラシード・テンペルズがその著書『バントゥー哲学』で体系化した、アフリカ的宇宙観の根幹をなす概念です。
西洋近代哲学が「実体(Substance)」を中心に世界を記述するのに対し、アフリカ哲学(特にバントゥー系諸民族の思想)は世界を「力(Force)」として捉えます。「在る(Being)」とはすなわち「力である(Force)」ことを意味します。
詳細解説
1. 力のダイナミズム
この存在論において、万物は孤立した静止的な物体ではなく、互いに影響を及ぼし合い、強まり、あるいは弱まり合うエネルギーの波動として捉えられます。人間、動物、植物、鉱物、そして死者や神でさえも、この巨大な「力のネットワーク」の一部であり、絶えず相互作用の中にあります。
2. セリティ(Seriti)との接続
個々の人間が持つ生命力の顕現がセリティ(影)です。セリティとは、その人が周囲に放つ力の「響き」であり、他者の力と交差し、コミュニティ全体のバイタル・フォースを増幅させる役割を担います。
3. 宇宙的ヒエラルキー
バントゥー哲学では、力の強さによる秩序(ヒエラルキー)が存在します。神を頂点とし、先祖、生者、動物、植物、鉱物へと至るこの連鎖の中で、人間は「力を受け取り、また他へ与える」存在として重要な位置を占めています。
この概念が登場するブログ記事
さらに深く知るためのガイド
- Placide Tempels, Bantu Philosophy, Presence Africaine, 1959.
- マティアス・ムカサ著『バントゥーの存在論』
- デイヴィッド・ボーム『全体性と内蔵秩序』(Implicate Orderとの比較)